2013年11月12日火曜日

ぜひ応用が効く勉強を

平成25年[問1]


平成25年[問1]は、普通に宅建の勉強をしていた人なら誰でも知っている法律用語の応用力を試す問題でした。こんな問題です。

次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。
(1)意思表示に法律行為の要素の錯誤があった場合は、表意者は、その意思表示を取り消すことができる旨
(2)贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかった場合は、その物又は権利の瑕疵又は不存在の責任を負う旨
(3)売買契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合には、買主は、その程度に応じて代金の減額を請求することができる旨
(4)多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的とするものを約款と定義する旨

肢1で試された応用力


肢1は、
意思表示に法律行為の要素の錯誤があった場合は、表意者は、その意思表示を取り消すことができる旨」が民法の条文に定められているか、を質問しています。

ポイントは『錯誤』という法律用語。

『錯誤』があった場合、その意思表示は「無効」です。
それなのに、肢1は、その意思表示を「取り消すことができる」とウソをついています。

ウソをついているので、肢1は、不正解肢です。
応用以前の『錯誤』の知識の問題ですね。

※ 参照 民法第95条



肢2で試された応用力


肢2は、
贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかった場合は、その物又は権利の瑕疵又は不存在の責任を負う旨」が民法の条文に定められているか、を質問しています。

ポイントは『瑕疵』という法律用語。

物や権利に『瑕疵』があった場合、普通に宅建の勉強をしていた人なら「売主の担保責任」を思い出すでしょう。
そして、売主の担保責任は「無過失責任」(売主に故意・過失がなくても負う責任)でしたね。

じゃ聞くよ? というのが問題作成者からの質問です。
贈与者(無料で物や権利をあげる者)の担保責任も「無過失責任」でいいかい?

答はノーですね。
売主の担保責任が「無過失責任」なのは、もらった代金相当分の見返りを買主にしてあげてないからです。
でも贈与者は無料であげているので、ワザと変な事した場合(贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかった場合)に責任を負うと民法が定めて、有償(売買)の場合と無償(贈与)の場合とのバランスを図ったんです。だから、この肢2が正解肢になります。贈与者は毒まんじゅうを毒と知って贈った時に責任を負えばいい、とイメージしましょう。だから、もらった人からは「タダより高い物はない」なんていう格言が発生しました。

肢2は、売主の担保責任を勉強している時に丸暗記してるだけの人を排除する問題です。
売主の担保責任が無過失責任なのは何故か? まで考えて勉強してきた人を対象にした応用問題です。

※ 参照 民法第551条1項 


肢3で試された応用力


肢3は、
売買契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合には、買主は、その程度に応じて代金の減額を請求することができる旨」が民法の条文に定められているか、を質問しています。

ポイントは『隠れた瑕疵』という法律用語。

売買契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合に買主が負う責任を「瑕疵担保責任」といいます。
普通に宅建の勉強をしていた人なら、宅建業法を勉強する際にも年中出てくるので、誰でも知っていますね。

「瑕疵担保責任」の内容は、「善意の買主に限って、契約の解除や損害賠償を請求できる」ということです。

それなのに、肢3は、買主は、「その程度に応じて代金の減額を請求することができる」とウソをついています。

ウソをついているので、肢3は、不正解肢です。
応用以前の「瑕疵担保責任」の知識の問題ですね。

※ 参照 民法第570条 民法第566条



肢4で試された応用力


肢4は、
多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的とするものを約款と定義する旨」が民法の条文に定められているか、を質問しています。

ポイントは『約款』という法律用語。

普通に宅建の勉強をしていた人なら、宅建業法で勉強した媒介契約の規制の所の「標準媒介契約『約款」を思い出すはずです。

宅建業者は…その媒介契約が、国土交通大臣が定めた「標準媒介契約『約款」に基づくものかどうかの別…を媒介契約書に記載しなければらない、というアレですね。

じゃ聞くよ? というのが問題作成者からの質問です。
君はそもそも『約款』の意味を知ってるのかい?

丸暗記に明け暮れしていた受験者のほとんどが、そこまで考える余裕は無かったでしょう。
でも、現代という時代に生活している私たちには、『約款』はいつもお世話になっている重要な制度なのです。

約款


約款』を日常用語で表現すれば、契約に定められた一つ一つの条項のことです。

私たちがいま勉強している民法は、百年以上前の明治31年に施行されました。
当時はまだ牧歌的なもので、契約に定められた一つ一つの条項(『約款』)は、契約先が見つかるたびに、いわば手作りで、一人一人の相手方と相談の上決めていました。

それじゃ面倒だと、当時の財閥なんかは、多数の取引企業がいたので、その多数の企業と同じ条項を定めたヒナ型を作るようになりました。企業間の合理化を図るためです。

やがて現代に至ると、生命保険業界やIT業界なんかは、多数の一般消費者も抱えるようになったので、その多数の一般消費者と同じ条項を定めたヒナ型を作るようになってきました。企業間のみならず一般消費者間とも合理化を図るためです。

こうした中いま、法務省では「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」というのを作成中で、その改正試案第30というところで、「1 約款の定義」と題し、

約款とは、多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的として使用するものをいうものとする。」なんていう条文を、改正後の新民法に盛り込もうか議論しています。

肢4は、
多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的とするものを約款と定義する旨」が民法の条文に定められているか、を質問しています。

上の複雑そうな文章を日常用語で表現すれば、「大勢と結ぶ予定の契約条項の全体で、契約内容を画一的ヒナ型的)に定めることを目的とするものを『約款』と定義しよう!」ということです。

ここまで読んで頂くと、この肢4は、私たちがいま勉強している民法には定めがなく、改正後の新民法に盛り込まれるかもしれない条文に過ぎないことが、お分かり頂けると思います。

なお、改正後の新民法に『約款』の定義を盛り込むことに反対の勢力もあります
なぜならば、『約款』はヒナ型なので大勢を相手にするには合理的ですが、契約者一人一人の意思を無視する短所があるからです。

私たちが、生命保険を契約する時の「生命保険約款」やITコンテンツを使う時に自動表示されるIT約款は、大きい会社等には合理的で有利ですが、反面、一般消費者には十把ひとからげ扱いされる不利益が拭えません。

大量消費社会の合理性一般消費者のキメ細かいサービスの要求とをどの辺でバランスさせるかという極めて現代的な経済応用を含んでいるのが肢4だったのです
肢4は応用が高度過ぎるので、問題作成者はこれを正解肢にすることは避けたようです。


形式的理由しかない一行解説は捨てろ!


平成25年[問1]に限らず、相も変わらず形式的理由しかない一行解説が横行していますが、これじゃ、何年勉強してもお金の無駄になりかねません。

本試験問題はチョットひねれば、同じテーマでも無限に作れますから、これから勉強するかたは、どうすれば応用が効く頭になれるか、とても重要です。
その一つとして私が提案するのが、形式理由しかない一行解説は捨てちゃうことです。

形式的理由しかない一行解説の例


平成25年[問1]
次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。
(1)意思表示に法律行為の要素の錯誤があった場合は、表意者は、その意思表示を取り消すことができる旨
(2)贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかった場合は、その物又は権利の瑕疵又は不存在の責任を負う旨
(3)売買契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合には、買主は、その程度に応じて代金の減額を請求することができる旨
(4)多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的とするものを約款と定義する旨

解説
(1)錯誤があった場合は、表意者は、その意思表示を取り消すことができるのではない。したがって、民法の条文に規定されているわけがない。
(2)贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかった場合は、その物又は権利の瑕疵又は不存在の責任を負う。したがって、民法の条文に規定されている。
(3)売買契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合には、買主は、その程度に応じて代金の減額を請求することができるのではない。したがって、民法の条文に規定されているわけがない。
(4)多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的とするものを約款と定義する旨は、民法の条文に規定がない。