2013年10月5日土曜日

借地借家法の基本

直前期になっても、借地借家法に自信が持てないかたが案外いらっしゃるようですね。
一般受験者を対象にした電話相談で、改めて感じました。

そこで今回は、間に合う人が10名でもいいから出てくれる事を期待して、
 ・ すべての法律の『根幹』(原則) … その条文が作られた背景・理由
 ・ すべての法律の『枝葉』(例外) … 『根幹』の逆転部分
という観点から、借地借家法の基本を書いてみます。

なお、私が上の観点を持ち出した理由が分からないかたは、先に、前回の記事を読んでみて下さい。


(1)実は、借地借家法全部が『枝葉』(例外)である


迷物講師が「借地借家法全部が『枝葉』(例外)である」なんて悪口言うなら、皆さまは、「そんなら、借地借家法の『根幹』は何だよ!教えてみろ!」と思うでしょ?

じゃ、教えてやるよ、良く聞いておけ!(笑)

借地借家法の『根幹』(原則)は、民法(明治29年4月27日法律第89号)にあります。
民法が作られた背景・理由は、「全国民の自由と平等を守る」です。

その歴史的背景は、1789年のフランス革命にあったと学者は言います。
封建時代の制限だらけの社会(不自由と不平等の社会)を革命によって変えたのですから、民法が作られた背景・理由が「全国民の自由と平等を守る」になったのは、理にかなっています。

やがて時代は20世紀になります。
現在のドイツの中にワイマール共和国というラント(小国)があって、ワイマール憲法というのが1919年に制定されました。

このワイマール憲法が、世界で初めて社会権という権利を定めました。

近代社会の『根幹』(原則)が、「全国民の自由と平等を守る」ことだと声高に叫んでみても、良く考えてみると、「自由と平等は矛盾する言葉」だとワイマールさんは気づいたのです。

だって、自由を無制限に認めると、金持ちはさらに金持ちになれます。
逆に、貧乏人はいつまでも貧乏のままだから、不平等が助長されちゃいますもんね。

そんなワケで、自由もいいけど、平等との調和を図るために、貧乏人にも配慮しようよ!となったのです。簡単に言えば、これが社会権です。

ちょっと遅れてわが国でも、社会権的な発想を取り入れる法律が出来ました。
時あたかも大正デモクラシーの頃です。中学か高校で習いましたよね。

その法律が、
 ・ 旧借地法(大正10年4月8日法律第49号)
 ・ 旧借家法(大正10年4月8日法律第50号)
です。この2本の法律が、平成3年に1本に統合されて(平成3年10月4日法律第90号)、いま皆さまが勉強している借地借家法になりました。

以上をまとめると、
 ・ 借地借家法の『根幹』(原則) … 全国民の自由と平等を守る  (民法の条文)
 ・ 借地借家法の『枝葉』(例外) … 貧乏人にも配慮しようよ!(借地借家法の全条文)
となります。

つまり、民法が作られた背景・理由である「全国民の自由と平等を守る」は、自由もいいけど、平等との調和を図るために、貧乏人にも配慮しようよ!という借地借家法によって、『根幹』が逆転してしまったのです。


(2)貧乏人にも配慮しようよ! の意味 


借地借家法では、土地を借りる人・建物を借りる人は貧乏人、逆に、土地を貸す人・建物を貸す人は金持ちです。

現実社会では完全には当てはまりませんが、借地借家法では、
 ・ 「借りる人=貧乏人」
 ・ 「貸 す 人=金持ち」
とシンプルに考えないとダメです。

借地借家法は、貸す人(金持ち)よりも借りる人(貧乏人)に配慮する法律です。


(3)貧乏人への配慮のしかた


借地借家法が貧乏人に配慮する法律だとは言っても、どんな場合でも貧乏人を助けてくれるわけじゃないです。

例えば、もともと貧乏なAさんが会社をリストラされて、もっと貧乏になっちゃったので「家賃の支払をチョット待って!」なんて懇願しても、「甘えるんじゃねえー」と借地借家法では助けてくれません。

なぜならば、借地借家法の『根幹』(原則)は、全国民の自由と平等を守る民法の条文にあり、民法では貸す人(金持ち)の自由(家賃をもらえる自由)も平等に保護しているからです。

じゃ、どういう場合に借地借家法が貧乏人に配慮するかと言えば、その配慮は一つしかないです。

それは、
 借りる人(貧乏人)が、なるべく長く借りられるようにする
配慮だけなんですね。

(4)具体例


借地借家法が配慮するのは … 借りる人(貧乏人)が、なるべく長く借りられるようにする … だけ。 
ここが借地借家法の基本であり、それ以上でもそれ未満でもないです。

宅建の借地借家法では、基本だけ出したのでは簡単すぎてすぐネタ切れになっちゃうので、上の基本を知っていることを大前提に、応用問題(具体例)が聞かれるのが常です。

具体例 - その1


借地の場合、当事者は、30年以上の範囲で、借地契約の存続期間を定めることができます。
もし、30年未満の存続期間を定めてしまった場合には、その存続期間の定めは無効となり、存続期間は30年に延長されます。
だから例えば、25年の存続期間で借地権を定めても、30年経過するまで、その借地権は消滅しません。
参照条文:借地借家法3条


どうですか?
借りる人(貧乏人)が、なるべく長く借りられるように 配慮されているでしょ? 

もし借地借家法が無かったと仮定すると、エライ事になります。
借地借家法の『根幹』(原則) である民法では…

当事者は、20年以下の範囲で、存続期間を定めることができます。
もし、20年を超える存続期間を定めてしまった場合には、その存続期間の定めは無効となり、存続期間は20年に短縮されます。
参照条文:民法604条

民法では、貸す人(金持ち)の自由(先祖伝来の土地を早く返してもらえる自由)も平等に保護しているので、
… 借りる人(貧乏人)が、あまり長く借りられないように … なっているんですね。

具体例 - その2


ここでは、平成24年度の本試験問題を使います。

(問題)
仮設建物を建築するために土地を一時使用として1年間賃借し、借地権の存続期間が満了した場合には、借地権者は、借地権設定者に対し、建物を時価で買い取るように請求することができる。[平成24年度/2012年度/問11(4)]

借地借家法が配慮するのは 借りる人(貧乏人)が、なるべく長く借りられるようにする だけです。

そうなると本問の場合は、借りる人(貧乏人)を保護する必要がないです。
だって、借りる人(借地権者)は「一時使用」のつもりで賃借しているだけでしょ。
初めから、長く借りられることなんか期待してないんですね。

ということは、借地借家法が 借りる人(貧乏人)が、なるべく長く借りられるように なんて配慮してあげる必要も無いわけです。

そこで借地借家法は25条
「(前略)…13条の規定(筆者注:建物買取請求権)は…(中略)…臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。」
なんていう条文を置いています。

だからこの(問題)は、誤りの肢となります。

※ 建物買取請求権 
借地権の存続期間が満了した場合に、契約の更新がないときは、借地権者が、借地権設定者に対し、建物等を時価で買い取ってくれと請求できる権利。
建物買取請求権を行使された借地権設定者(金持ち)は、「そんなボロい建物買わされるくらいなら、もう一度契約を更新しよう!」となりやすく、結果、借地権者(貧乏人)が、なるべく長く借りられるようになることをねらった制度。
建物買取請求権を定めた借地借家法13条1項の原文


(5)電話相談で改めて感じたこと


独学者も予備校利用者も、民法の賃貸借の定めと借地借家法の定めとを、別々の並列したものと初めから考えているかたが多いです。
そのくせ、細かい事にはやたら詳しいかたが目立ちます。

そうじゃないんですよ! 繰り返しになりますが、
 ・ 借地借家法の『根幹』(原則) … 全国民の自由と平等を守る  (民法の条文)
 ・ 借地借家法の『枝葉』(例外) … 貧乏人にも配慮しようよ!(借地借家法の全条文)
であり、民法の賃貸借の定めと借地借家法の定めとは、別々の並列したものじゃないんです。

ここ(幹や根)がしっかりしていれば、枝葉が枯れても、木はみごと再生・復活するがごとく、後が早いですよ! と今日は言いたかったのです。

建物でも、土台が腐っていたら、上にどんな良い設備等(高額な講座)を増築しても、やがては丸ごと倒壊(宅建受験の断念!)です。それでも運が良ければ、倒壊しないうちに合格しますが…。

責任の半分は、私たち受験業界が提供する講座・教材等にあるのでしょう。
今日の記事は、私がCDでしゃべれば10分で終わる所を、罪滅ぼしの意味も込めて、読み物にしてみた次第です。